品質月間テーマ

原点回帰! 人づくりと強い現場で創る 新時代の品質

COVID-19は沈静化の方向に向かい,マスクの着用の非義務化,感染症法5類への移行など,収束したとはいえないものの,ようやく次のステージに進んだといえるところまで来ました.「これで元の生活に戻れる」と喜ぶ方もいますが,たとえCOVID-19が収束したとしても,完全に元の世界に戻ることはないと思われます.この3年で働き方や生活様式に多くの変革がもたらされ,産業界の品質創造のあり方も,この新時代に適合するように新たなパラダイムの構築が求められています.

COVID-19に対応するための様々な対策は,応急対策としてその場しのぎでとられたものもあれば,今後永続的に有効と思われる本質的な対策もあります.真に変えなければならないものと,変えてはいけないものを峻別し,新たな品質創造のためのパラダイムを探索する必要があります.そこで,今年の品質月間では,「原点回帰! 人づくりと強い現場で創る 新時代の品質」というテーマを設定しました.

原点回帰は,顧客を満足させる品質を創造するには何をすべきかを,あらためて見つめようというメッセージです.COVID-19という外乱に振り回された今だからこそ,原点に立ち返り,着実に守るべき普遍的な考え方,活動の基盤が何かを明らかにすべきです.中でも,TQMの強みである人づくり,現場力は,品質創造のために外せない基盤です.ただし,それをどう実行していくかは,これまで築いてきた方法論のみでは不十分であり,DX,AIなども取り入れながら,新たな方法論を開発していく必要もあるでしょう.今年の品質月間では,ポストCOVID-19の出発にあたり,皆様とともに,原点に立ち戻って今後の目指すべき方向を考える機会にしましょう.

第64回 品質月間委員会委員長
早稲田大学 理工学術院 教授 棟近 雅彦